厚生労働省から2009年就労条件総合調査が発表されましたが、給与の基本給における決定要素を、成果・業績とする会社が前回の2001年調査時よりも15.7ポイント減少、約46%という結果でした。(※従業員30人以上の企業6,147社に実施し4321社から回答)

平成21年就労条件総合調査結果の概況(厚生労働省)



鳴り物入りで「成果主義」がもてはやされた時期がありましたが、 常々私はこれに疑問を感じていました。なぜなら、これが馴染まない業態もあるからです。
例えば、交通関係を業態としている会社。いかに乗客や荷物を短時間のうちに目的地に届け、どれだけ多く売り上げを上げたか?という要素を成果として判断していた会社もあるようです。裏を返せば、法定速度を無視しても良いともいえるようなものですよね。これによって大きな事故を起こせば、会社の信用低下を招くにも関わらず・・・。信用低下だけで済めば良い方かもしれません。人身ともなれば、人の命に関わる問題に発展しますから、会社存続の危機へとなるかもしれません。

馴染まないような業態ですらも、成果主義を導入していた・・・本当にそんなところがあったのか?と、いま話せば冗談のような嘘のような話ですが、当時はこれが現実だったんですね。そもそも、何をもって「成果」の基準とするのかすら曖昧な会社もあったようです。思い当たる節ありませんか?でも、これからは「成果主義の時代である」というスローガンのもと、見渡せば「成果」「業績」といっていたような印象を受けます。

今回の調査結果で、ようやくその呪縛から解き放たれたのかな?という印象を受けました(笑)やはり、ある一定以上の役職者には成果を求めても良いと思いますが、そうでない社員に対して、給与決定要素のほとんどを「成果」で占めるというのは、まさにいま流行語の「ブラック企業」なのでは?という感じがしてしまいます。(きちんとした人事制度運用がなされた会社において「成果主義」が導入されている場合は除きます。)

では、何で判断をすれば良いと思われますか?
これは、あくまで私の考え方ですが、やはり個人を見て判断していくことではないでしょうか。採用時も画一的な処理から個別的な契約へシフトしてきています。であるなら、個々人の任せる仕事の責任度合いや難易度、能力、勤続年数を判断要素にすることが適切ではないかと思うのです。そして、働く社員にとっても明確です。


今回の統計を見ても、

(1)職務・職種などの仕事内容・・・71.8%
(2)職務遂行能力・・・67.5%
(3)年齢・勤続年数・・・63.7%
(4)業績・成果・・・44.4%

(複数回答。厚生労働省発表資料「管理職以外」抜粋)

となっており、個々人の評価によって基本給の決定要素としているところが多くなってきているようです。また、「成果」を基本給の決定要素としている会社でも「短期の個人の業績・成果」で判断しているところが多いことがわかります。

基本給決定に関して、「成果」を要素に含めているところも、そうでないところも、評価対象は「個」にシフトしていることを読み取ることができます。今後はより一層、こうした動きになってくると思います。個々の社員に関して、適切な評価がされる、そしてそれが給与に反映される。でなければ、労働力人口が減少している今、いい人材を獲得することができなくなります。


私は「適切な評価」と書きましたが、評価をするためには、人事制度が必要です。貴社では、その制度が活かされた運用がされていますか?「個」にシフトしていても、的外れな評価をしていたら、それは「個」といいながら、評価していないのと同じです。まったく意味がありません。自分を見てくれていない会社に長くいたい!とは思わないからです。そういった意味では、管理職向けの評価訓練研修も「良い人材定着・育成」には欠かすことのできないステップです。

中小企業の場合、「人事制度」というと一歩引いてしまうところが多く見受けられますが、ぜひ経営者の方々には難しく考えずに、取り組める簡単なところからで良いので取り組まれることをオススメします。

例えば、これからの1年、Aさんには何を会社として求めるのか?というところから、どんな仕事の内容を覚えてもらい、どんな達成(ゴール)をして欲しいかを簡単にテキストに落とし込んで、社員に伝え、1年かけて適宜フォローを入れていく。そして、それに対して会社が評価(良かった点・次の年に再度挑戦して欲しい点など)をする。これだけでも、今とはまったく違った結果になります。


今回の調査結果から、企業規模を問わず、一昔前の成果主義とは異なる「個」を重視する方向へ移り変わっていることがわかりました。(前述したとおり、的外れ評価をしている会社もあると思いますので、実際、すべてが完全に「個」に着目した適切な評価を行っているとは言い切れませんが・・・)


私は、いかに長く定着してもらい、いかに社員教育を徹底して、優秀な社員を育成し、強い会社を作るかが今後の中小企業の課題だと思っています。その答えは、人事システムにあります。社員がやりがいを持って働くフィールドを用意することができるのは会社です。中小企業こそ、「個」にシフトしてきている今、まさに個々の社員に目が届く利点を生かし、精鋭部隊を作るべく、今回の統計から、人事システムを考えるきっかけ(あるいは、いま既にシステムがある企業は、見直す機会)とされてはいかがでしょうか?